M-factoryのギターとは
私は「良い楽器」とは、決して「誰が弾いてもいい音のする楽器」だとは考えていません。
そもそも「いい音」とはなんでしょうか?
 
それは「綺麗な音」のする楽器でしょうか?
では、悲しみや辛さを表現をしたいときにはどうすればいいのでしょうか?
それは「美しい音」のする楽器でしょうか?
では、ブルースなど「臭い」表現したいときにはどうすればいいのでしょうか?
 
約30年に渡ってトップミュージシャン(ギター以外という事も含めて)と接して来てとても強く感じることは、
彼らが手にしている/欲しがる楽器とは、、
・感情を受け止めて、そのまま音にしてくれる楽器
・表現を素直に再生してくれる楽器
・コントロールされたタッチに素直に反応する楽器
という事だと感じています。
 
これは同時に、
・良いタッチで弾かないと、それなりの音しか出ない
・下手なタッチをしてしまった時には敏感ににそういう音が出てしまう
という、車で言うとまるでレーシングマシンのような鋭い特性も併せ持っている、という意味も持ち合わせていています。
 
私はアコースティック・ギターはやはり「ストロークで歌をうたう」楽器であることが基本だと考えます。
歌の無いインストゥルメンタル・スタイルにおいても、歌心のある音楽とはそういったギターから生まれていることも事実だと思います。
 
実際に日本を代表するギタリストである岡崎倫典・小松原俊・岸部真明・押尾コータロー、らの手にしているギターは、いずれも「ストロークで歌をうたう」ことができる楽器である、ということを私は知っています。

なぜ、今、M-factoryがギターをリリースするのか?
 
現在のアコースティックギター・シーンには少々が逆行する事かも知れません。
今更オールド・ギターが何だと言う人も居るかも知れません。
でも、私はそういうギターが好きなのです。
 
私の想うアコースティック・ギターとは(オールド・マーチンやオールド・ギブソンの様に)、
・弾けば弾くほどに鳴るようになってプレイヤーに馴染んでくる楽器
30年、50年という年月に渡って永く弾き続けられるような楽器
・子供の代、孫の代まで伝えられるような楽器
・作りの良さ=丈夫さを持ちつつ、それでいて繊細な表現にも対応出来るバランスを持つ楽器
なのです。
 
M-factoryのブランドを持つギターとして特にこだわっている点は、
・低音の太さ
・ガツンと弾いたときにガツンとはじき返してくれる力強い反応
そのために行き着いたのが3.7mmという厚いトップを持つ構造なのです。
(少しくらい叩いても割れないように、という意味でトップを厚くした訳ではありません)
 
ただトップを厚く、丈夫にしただけでは楽器としては成立はしないでしょう。
「トップは厚く、でもそれでいて繊細なタッチにも反応する」というバランスの両立する楽器の開発、というのが沖田氏と私の目指すところなのです。